市場化テスト法(公共サービス改革法)の成立
森下 一乘 株式会社ブライトキャリア 代表取締役社長
新聞報道によると官民競争入札の市場化テストの仕組みを知らない人が96%にのぼることが判った(9月21日内閣府調査)。平成17年から政府は市場化テストを実施してきたが、まだ国民に周知されたとはいえない。
市場化テストとは公共サービスの担い手を競争入札で決めて、サービスの質を高め、効率を上げる仕組みである。1980年代英国のサッチャー首相がはじめた手法で、その後、米国、豪州等で活用されて小さな政府の実現に寄与している。
わが国では平成17年から2年間テストを行い、本年6月には正式名称「公共サービス改革法」が成立した。今年11月ごろから実際の入札作業が始まり、各方面の官の作業が発注されることになる見込みである。
この法律は次のような内容となっている。
1.官民、民間の競争入札の二つがあり、公共サービスの見直しを行う。
2.政府は、公共サービス基本方針を定める必要が有る。
3.公共サービスの改革について、透明性、中立性、公正性を確保するため監理委員会を設ける。委員は13人とする。
4.国家公務員の民間勤務への道を開き、退職金の勤続通算を行う。
テストの結果は合格点
政府は昨年6月から、社会保険料の徴収業務、刑務所の管理業務、ハローワーク関連のキャリア交流プラザ、求人開拓事業等をテストとして実施した。わが社は埼玉、愛知のキャリア交流プラザと福岡県の求人開拓事業を受託し一年間事業の運営を行った。
キャリア交流プラザとは失業者の教育と就職先を見つける仕事で、一年間で約900名の方々が受講した。結果は官が行っていたときの約6割の費用、就職率も過去の55%が65?70%へ(編成クラスによって結果が異なる)向上し、民間受託の成果をあげることができた。
また、求人開拓事業では14名の求人開拓員が一年で約2万社を訪問し約5千職務を開拓し、当該地域の求人倍率の改善に役立った。
これらの経験からするとハローワークの周辺業務は民間企業としても、十分に業務へ参加できることが証明されたといえよう。テストの実施であったのでやむをえない面もあったが、引き継ぎが不十分だったり、当初は対象外であった60歳以上の方が数十人含まれる等、評価が難しい点が多く見られた。しかし、一年経過してみると、申込者の大多数が満足感を表明しており、テスト結果は満足すべきものと自己評価している。
規制緩和の動向
安倍内閣が発足して今後規制改革がどう進められるか不透明な部分もあるが、大筋では規制緩和の流れは変わらないであろう。特に、市場化テストは法律が施行され、監理委員会が発足する等、後戻りはできない。今後の進展を見守る必要が有る。
ただし今後の入札に関して、以下のことは強く要望していきたい。
1.民間はコスト競争に走る可能性があり、安値受注が横行する可能性が有る。そうなると安かろう、悪かろうということになり、結局民間には任せられないという方向に力が働いてしまう。公共サービスは質と価格がバランスが取れて初めて民間に委託する意味が出てくる。
前回の市場化テストで社会保険の徴収業務が入札されたが、ある企業(団体)は一円で入札し、官のほうも安ければよいということで結局、発注している。
これは、不公正入札である。公共サービスであっても適切なコストを負担するのは長期的に見て必要なことである。入札方式と質の確保のために何が必要か、監理委員会には厳重に審査してもらいたい。二度とこの分野では談合等の不正が生じないように、公正でサービスの質を確保するための入札がおこなわれなければならない。
私はサービスの確保のための条件が7割、価格競争力が3割というのが妥当と考えているが、この評価ウエイトと、方法が公表されるべきであろう。
2.従来公務員が従事してきた公共サービスが民営化されるのであれば、これらの人々の対応も十分考えておかねばならない。排除する考えでなく、プロジェクトに組み入れることも大切である。
一つのアイデアであるが、民間開放する事業を官民合同で運営するとそれぞれの良さが生かされる可能性が有る。そのための条件は公務員が民間企業に転職するつもりで従来の仕事をしなければならない。いやいやながら民間会社を選ぶならば効率を阻害するばかりとなる。
民間も公務員を取り込んだよりよいサービスを提案すると、官の抵抗も軽減されるであろう。
3.国民の評価が必要
市場化テストが成功するためには国民大多数の理解と支援が必要である。コストだけでもだめであり、サービスの内容が向上してこそ対象分野も広がることになる。そこで、常に国民を意識した評価と、改善が行われるべきであろう。そのためにも「監理委員会」の役割が大きいのである。
今後の見通し
今後入札が11月ごろから始まる。ハローワーク関連は人材銀行(3箇所)、キャリア交流プラザ(8箇所)、求人開拓事業(5地域)と雇用能力開発機構の職業訓練、若者のキャリア支援である。来年4月から3カ年(一部1年)の実施が予定されている。
各人材関連各社は調査、準備に入ると思われる。
市場化テストはわが国の小さな政府実現の手法の一つである。新しい発想と知恵を生かして成功させなければならない。そのためにはわが国社会に長く存在した談合を廃し、安値受注がまかりとおる入札制度の改革が必要である。官製談合を廃止し、公正な競争を行うための仕組みづくりは、まだ始ったばかりである。新しい制度に知恵を出していかなければ、市場化テストも前に進まないであろう。
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