カレラ ニュース

日本人材紹介事業協会 新役員に聞く

6/1 22:40  オピニオン

5月31日、東京・港区のホテルで開催された日本人材紹介事業協会(人材協)総会が開催され、新会長に佐々木和行トランサーチインターナショナル社長、新副会長に盛郷重光ジェー・エム・アール会長、齋藤衛アネックスリサーチ社長が総会後の臨時理事会でそれぞれ選任された。佐々木新会長と盛郷、齋藤両新副会長に、業界の課題と今後の取り組みについて抱負を聞いた。

業界の社会的信用向上とグローバル化への対応が急務
佐々木和行 日本人材紹介事業協会会長(トランサーチインターナショナル社長)

 業界を取り巻く課題で一番大きな問題は、業界が急速に広がり、同時に取り扱い業種・職種も大幅に拡大したため多様化がいっきに進んだことだろう。そこに新規に参入してくる企業、コンサルタントがどんどん入り、それによって生じてくる様々な問題や課題が山積してきている。
 もう1つの課題は、グローバル化だ。グローバル化は進んでいるが、人材紹介業はまだ対応できていないと言っても過言ではない。純然たる国内産業などでも、グローバル化が進みつつある。従って、人材紹介業界もグローバル化にどのように対応していくかを考えていかなければならない。
 そして3つ目は官民共同して事業を進め、しかも雇用の安定を図っていかなければいけないという社会的な使命があることだ。「官から民へ」を更に一段と進めることによって小さな政府作りに協力することが課題になっていると思う。
 1つ目の新規参入の問題で、特に重要視しなければならないのはコンプライアンスである。人権問題、個人情報保護問題、雇用均等問題、その他就職にかかわる性や年令などに関する差別禁止の問題など等、遵守しなければな
らない法令、規則などは数多い。ヒト、『人間』を扱う我々の業界では、単に法律、規則を順守するだけに止まらず、倫理、道徳さらにマナーにも心配りし、その上に自らの人格育成にも心がける必要があろうかと考える。急増する新規参入と多様化する業態の中で、とかく求められるのはスピードであり量であるが、往々にしておろそかにされがちなコンプライアンスを重視した真のコンサルティング能力である。
 ヒトと企業をマッチングさせることがコンサルタントの究極の業務ではあるが、単にスキルとニーズとの突合せ、マッチングだけが我々コンサルタントの仕事であるというのは悲し過ぎる。求人企業に対して人材採用を通じた経営コンサルティングし、かつ求職者に対しては転職を通じて人生設計のコンサルティングを行えることがコンサルタントのやり甲斐だと私は信じている。
 コンプライアンス、プラス、コンサルティング能力を発揮するコンサルタントが活躍することによって、業界の社会的信頼性が増し、社会的地位も向上し、社会的にかけがえに無い業界になっていくのではないか。
 昨年、雇用能力開発機構からの受託(雇用高度化推進産業)で、人材紹介コンサルタントの資格講座及び試験をモデルケースとして実施した。最終的に22人が合格し人材協認定の資格を取得した。今後はこの資格制度を業界内に広げていこうと考えている。コンサルティング能力やキャリアカウンセリングのスキルを高めることで、業界の社会的な信用を上げていく。そういう大きなプランのもとにやっていこうと思っている。
 2つ目に挙げたのがグローバル化に関する課題だ。国外にわたる紹介は、相手国の人材紹介会社と提携し、その提携先について日本の国内で厚労省の承認を得なければいけない。そういう規程になっているが、業界内でここまでやっている会社は非常に少ない。相手国や相手先が変わるたびに許可を取得しなければならないという繁雑さがある上に時間もかかることによる。大手企業では、進出した国での許可を取り、日本でも許可を取り提携するという形で取り組みやすいが、現地の人材会社と日本の人材会社が提携してやろうとするときには様々な障害があり難しい。こうしたことはILOの規約で決められており、それに従って各国の国内法はできている筈だが、実際には海外諸国がこれを順守しているか否かが疑わしい。そのあたりが研究課題でもある。
 また人材協は受託事業でホワイトカラーの国外における紹介業の実態や法制度を調査している。昨年は中国、今年は韓国を調べ報告することになっている。これは単にその国々の実態や法制度を調べるというだけで、これだけでは日本の人材紹介会社が十分満足できるものにはならないと思う。やはり人材紹介会社が知りたいと思っていることは、諸外国の労働事情、紹介状況及び紹介業界情報であろう。グローバルビジネスに入っていくにはどんなことが必要か、より具体的なニーズに対してどんなことができるのか、そしてどんなビジネスモデルが必要か競争相手はどんな会社があるのかを掘り下げていかなければならないと思う。
 3つ目に挙げた官と民の関係についてだが、長期失業者の就職でハローワークでは決められないものを、全国の主要都市で民間が受託し、かなり成果が上げている。あるいはニート、フリーターを対象としたジョブ・カフェを入札して民間で運営するという市場化テストなど、協会としてはさらに側面からサポートしていかなければならない。ハローワークが行っている求人企業の開拓などは民間が得意とするところだ。官と民が競争することも必要だが、すでに民でできることは官には退いてもらい、民にすべてまかせる、というようにして頂きたい。官の仕事を民に落とし、官がやるべきところは何なのかというところをもっと絞ってやって頂く方向性が必要だろう。
 今後、官の役割はコンプライアンスを守っているかどうか、あるいは企業が採用した後の監視など、チェック機能を強化してほしい。規制で縛るのではなく法律を順守させるような仕組みに変えていく必要があるだろう。もちろん社会的な弱者については、官はこれからも強力にサポートする必要があると思う。(談)

プロフィル
佐々木 和行(ささき かずゆき)
1943年生まれ。長崎大学経済学部卒。67年、佐世保重工業に入社し、輸入船舶の営業などを担当。80年に船舶機械メーカー辻産業に転職し、香港駐在代表に。87年に人材会社のケンブリッジ・リサーチ研究所研究所に入社し、シニアコンサルタントを経て97年から社長。99年ケンブリッジ・トランサーチ社長兼任。01年にMBOによりトランサーチインターナショナルを設立、社長に就任。現在に至る。


国内外の労働力の移動に基準を
盛郷重光 日本人材紹介事業協会副会長(ジェー・エム・アール会長)

 業界の課題の一つに国外にわたる労働力の移動の問題がある。労働力を国内に入れる“イン”と国外に出す“アウト”の問題があるが、アウトの場合には日本の企業や外資の日本法人に、日本で雇用してもらって、その会社から出向するという形を基本的にとる。あるいは海外での紹介は現地法人をつくりその国の法律に則って現地の人材を紹介する。こうしたアウトの場合は基本的には問題は少ない。
 ただインの場合には単純労働者や専門的・技術的知識を持った人がいたりと幅がある。これをどう考えていったらよいのか。日本が少子高齢化社会の日本人だけの閉鎖社会の中で小粒でもやっていけばいいという考え方と、もう一つは経済成長をして国力を保っていこうとする考え方がある。後者のような形でいくとすれば当然海外から受け入れないと労働力不足になってくる。このバランスをどのようなレベルに取るか、国を含めて十分論議をし、コンセンサスを得ながら進めていく必要がある。
 行政、法律、財政、教育、社会保障や入国資格、入国後の管理体制等が整合的になって、初めて受け入れができる。個人的には、今後日本だけが閉鎖的な社会でいるというのは難しいと思う。今の行政のやり方は、労働は厚生労働省、入国管理は法務省、教育は文部科学省と縦割りだ。横串を通した検討機関をつくって進めていかないと、先般フィリピンの看護師の受け入れのように、外圧で受身で決着することになる。能動的に基準を設けてしっかりと受け入れ、その代わり不法入国者は無くすというようにしなければいけない。大きな問題で難しいが、検討グループができれば、人材協としてもその中で利害を超えた意見を述べていきたい。
 「官民協調」の流れの中では厚労省、労働局などと連携を密にとり規制緩和以後の課題についても検討していきたい。また社団法人全国民営職業紹介事業協会(民紹協)との関係では、見直しを進める時期に来ていると考えている。他に加入している業界団体はテンポラリーな職種の団体が多く、われわれとしてはこのままでいいのかという思いがある。
 また特殊法人の産業雇用安定センターでは新たに無料職業紹介を始めている。ハローワークは失業者を対象に職業を紹介しているが、この特殊法人は在籍者を対象にして転職支援を補助金をもらって行っている。これは明らかに民業圧迫ではないか。われわれは自助努力で事業を運営しており、こうした補助金で民業を圧迫するようなことはすぐに止めて頂きたい。この組織はもともと重厚長大型の企業を中心とした中高年対策で大企業の人を出向で中小企業に紹介する窓口としての機能を果たしてきた。日本が円高で不況に陥り、企業が中高年対策を実施しなければ立ち行かない時代に設立されたのだが、いまは各社の状況は様変わりしておりその使命は終わっている。
 人材協内部の問題としてはコンプライアンス、人権、コンサルタントの資格認定などの問題があり、業界のレベルアップを図っていきたい。またいま人材協の会員の悩みは、雇用関係の指数は改善され、求人案件は多いが、求人にマッチした求職者が少ないことだ。そのために大学あるいは同窓会、経済団体等のホームページと人材協のホームページの間にリンクをはり、求職者の増大を図る等、会員へのサービスやメリットを拡充したい。こうした努力を通じて、会員の増強を図り、組織基盤を強化できればと考えている。(談)


倫理規定でトラブル防止を
齋藤 衛 日本人材紹介事業協会副会長(アネックスリサーチ社長)

 行動基準は企業としては倫理一人ひとりの行動、コンサルタントの行動は道徳だ。倫理道徳という形で、自主的に人材協が体系化してメンバーでその価値規範を共有できるようにすることが人材協に望まれる一つだと考えている。そうすることで未然にトラブルを防止し、結果として安定感のある秩序と健全な発展を目指していく必要がある。
 他の業界と違うところは扱う単位が、人材会社の場合は小さいことから、例えば構造設計の偽装のような事件は起こりえない。ちょっとしたトラブルが起こっても業界ぐるみでという事件は今後も起こらないと思う。また規制が緩んでくると規制緩和に対する提言だとか要望は段々少なくなってくる。これから求められてくることは、人材会社が急増によるサービスの質の低下とトラブルの増加で、これを防ぐ必要がある。
 個人情報保護ができてからは、運用面で問題が出てきている。拡大解釈しすぎて何でもかんでも個人情報保護に結び付けて考える傾向になっている。こういう側面は人材協がいち早く基本的な考え方を確立させて、個人情報保護に関する見解や考え方をメンバーに知らせていく必要があるだろう。
 人材会社では、例えば会社の名簿とかスカウトメールなどが特に対象になるが、個人情報保護を必要以上に拡大解釈はしないようにしなければならない。いまは「公人」と「私人」とが混同されている。気をつけなければならないのは私人の方で、このプライバシー情報は侵害してはいけない。ただし公に関わる個人情報はこれを追うのがわれわれの役目でもある。
 一般的には履歴書にはプライバシーに関することを書く欄があったり、場合によっては人材会社がプライバシーにかかわる履歴書を要求したりする。したがってプライバシーに踏み込み過ぎの部分が出てくる可能性がある。このラインを守るということは、これは個々の人材会社の良識に任せるしかない。個人に対してどのあたりまで踏み込んでよいのか、そのガイドラインを用意するのが人材協の役割だ。人材協はいち早く基本コンセプトを形作って、拡大解釈をなくすためにも提言を行ってもよいのではないか。
 本人の了解無しにクライアント側に名前が漏れてしまうという話をよく耳にする。これは人材会社間の競争が激化する中で起こってくることだが、こうした細かなところを倫理規定に入れてトラブルを防止するなど倫理・道徳のあり方を示す必要がある。(談)


ブックマークに追加する

他の記事