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紹介人材の”質”低下を危惧する

8/1 17:50  オピニオン

  企業のキャリア採用のニーズは相変わらず旺盛である。業績の回復を受けて積極的な新規事業投資を行うとともに、即戦力となるキャリアの確保にどの企業も懸命である。募集ツールとして人材紹介会社を利用している企業も多く、採用担当者の話を聞くたびに人材紹介会社に対する期待がひしひしと伝わってくる。

一方で拡大する人材マーケットを新たなビジネスチャンスとして狙う新規の参入が相次いでいる。人材派遣業の紹介事業部門の新設をはじめネット系のベンチャーなどの参入により、各種転職関連ウェブサイトが次々に開設されている。とりわけネット・リクルーティングの隆盛には目を見張るものがある。業界に新規参入したあるネット系ベンチャーはシステム開発と営業マンの人件費を含めて5億円を投資したという。この会社の若き経営者は「人材ビジネスは素人ですが、市場は今後ますます伸びますし、勝ち抜く自信は十分にある」と豪語する。
 だが、その熱いベンチャー精神には敬服するものの、一方で業界の行く末に一抹の不安を感じたのも事実である。それはライバル企業の増加によって激しい人材獲得競争が展開された結果、紹介人材の質が低下し、ひいては紹介会社としての信用や付加価値が失われてしまうのではという危惧である。業績拡大を目指し、質よりも量を追求した挙げ句、求人企業の求める人材像とかけ離れてしまうことになれば紹介会社の信用を貶めることになる。
 いうまでもなく人材紹介業の価値とは、きめ細かい”個別コンサルティング“による適格な人材紹介にある。人材という素材をカウンセリングなど時間と労力を費やすことで人材の持つ可能性を引き出し、求人企業の求めるスペックとの最高のマッチングを実現するところに最大の付加価値がある。また、そうであるからこそ企業は紹介手数料を支払う価値があると考えるのである。いたずらに紹介数だけで勝負しても、結局撥ねられてしまう事態が続けば、何も人材紹介会社に頼る必要はないと企業は思ってしまうだろう。
 事実、「紹介数は100人あっても採用に結びつくのは3人程度」「100社の紹介会社のうち有力な人材の紹介実績が1人以上あるのは十数社にすぎない」といった採用担当者の声も出始めている。求人企業にとって人材紹介会社の増加は選択肢が増えるというメリットがある反面、数を打てば当たる方式の営業の横行やどの紹介会社を選べばいいのかわからなくなる”玉石混淆“状態を呈しているのも事実である。
 人材マーケットの拡大による競合他社との競争に血道を上げるのはいいが、結果として自らの首を絞めてしまう事態にもなりかねない。求人企業にとって価値ある紹介会社とは、数こそ少ないが必要とする人材を確実に紹介してくれる会社である。いわば顧客価値経営の視点に立った信頼関係の構築が紹介会社の成長と継続性を支えるのである。業界が活況を呈している今こそ改めてその真価が問われている。
 急成長している市場ほど揺り戻しも激しく、いずれ成熟期を迎えるのは一般的な経済原則だ。市場に踊らされている企業ほど淘汰される可能性が高い。人材紹介業の役割・価値とは何か。常にその原点に立ち戻り、歩みは遅いが着実に実績を積み上げていくことが企業存続の最大の条件であると信じてやまない。

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