特集記事

人材エージェントが見る 2008年の雇用情勢

2008-01-21 13:57   ()

景気は「横ばい」でも、人材ニーズは「増加」

 2007年は本格的な企業の業績回復と規制緩和により、新卒・中途採用ともに空前の売り手市場となったが、07年6月以後は有効求人倍率が頭打ちとなり、求人需要は減速した。本紙では毎年恒例となった、「2008年雇用情勢と人材ビジネスの動向」調査で、主要人材会社のトップ及び人材紹介事業責任者にアンケートを行い、今年を展望した。

 厚生労働省の一般職業紹介状況によると、07年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.07倍となり、06年同月を0.01ポイント上回ったが、これをピークに7月は同水準、8月以降は前年同月比微減に転じている。直近、11月30日発表の07年10月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.02倍となり、06年同月を0.03ポイント下回っている状況だ。

 また、昨年後半からはサブプライム問題や原油高、穀物相場高騰による物価上昇にともない、景気の先行き不透明感が一層増し、雇用情勢にも影を落とし始めている。

 本紙が実施した「2008年雇用情勢と人材紹介ビジネス展望に関するアンケート調査」によれば、雇用情勢に大きな影響を与える日本の景気動向について、人材ビジネス各社の多くが前年比 「横ばい」と回答した。「外部環境により業績を落としている企業もあるが、影響が少ない業界などをトータルにみれば横ばいに推移する」(岡田之俊キャリア・ネットワーク社長)、「設備投資含め拡大するが、金利上昇の懸念及び原材料の価格高騰の影響を受けると思われる」(河野隆共栄経営センター社長)などが要因となっている。

 次に多かったのが、「やや悪化する」「悪化する」という回答だ。理由としては、「円高、サブプライム問題の波及、コスト高」(岡田政之バンステーション社長)、「サブプライム問題で米国景気が悪化する」(丹生谷正サンエリート社長)ことなどが懸念材料となった。

 一方、「やや良くなる」という回答もあった。「企業業績の回復」(森下一乘ブライトキャリア社長)、「不動産業が回復基調、海外ビジネスの新規参入」(サイモン・チャイルズCDS社長)などがその理由となっている。

 企業の人材ニーズについては、「やや減少する」という回答も多かったが、「増える」「やや増える」とする回答が過半数を占めた。「短期的な景気の影響もあるが、中長期的な事業成長を維持するための人材獲得は不可欠な状態」(村井満リクルートエージェント社長)、「少子化や団塊の世代の離脱、企業の若返りもあり20代、30代の需要は今後も高い」(城山光秀ゼロン社長)などが、主な理由となっている。

 また人材ニーズは「横ばい」としながらも、「景気の不透明感がある中、経営高度化のための人材ニーズは継続的に発生する」(渡部昭彦ヒューマン・アソシエイツ社長)という意見も目立った。

 一部企業では既に採用数の見直しが行われ、昨年のような求人ニーズは見込めないものの、「若手、中間管理職の募集が目立ってきている」(吉坂純一ハイテクジャパン社長)ことから、今後は一定数の必要な人材を確保する慎重な採用が持続するものと考えられる。

 ほぼ全体に共通する見方としては、08年はサブプライム、米国景気、原油価格、穀物相場、コスト高などの企業業績への影響によって人材ニーズの明暗も分かれることになりそうだ。

 このように昨年に比べ、人材ニーズは減速し、微増となることが予測されることから、「求人案件は増えると考えられるが、企業が人材に要求する技術レベル、実務能力レベルはより高くなり、選考ハードルもますます高まる」(小川正純イオス社長)。 こうした人材採用の厳選化が進むことは、ほぼ確実な情勢だ。

 特に、「専門スキルをもったハイクラス人材と若手という2極化に、さらに拍車かかる」(熊本豊敏メイツ紹介事業本部副本部長)、「グローバルな人材確保の激化と争奪戦になる」(加藤春一東京エグゼクティブ・サーチ社長)など人材の質により、
採用が厳しくなると予想する。

 業界による採用傾向にも既に違いが出てきている。業界別では、「電機業界は減速しているが、体力のある企業は採用を活発化させる。IT業界では人材を希望しても、(人材不足で)採用が困難な状況が続き、退職に対する引き止めも強烈になってきている」(能勢賢太郎テクノブレーン社長)、「建設、小売、農林水産業において景気先行きが不透明なため、人材需要に影響がでている」(廣江隆司ヒューマンリソシア副社長)、「金融を中心に求人件数が減少してきている」(糸川俊A・ヒューマン社長)ことなどから、08年は業界別の傾向がさらに顕著になりそうだ。

 人材ビジネス全体では、昨年末のリクルートの派遣最大手スタッフサービス子会社化に代表されるように、収益力が低下している派遣各社を中心に再編が進むことが想定される。人材紹介分野においても、事業者の大幅な増加にで競争が激化していることから、統合・合併の動きが表出してくるだろう。

 こうした状況の中で懸念されることは、人材サービスの質の低下とコンプライアンス問題の噴出だ。企業人事部の採用厳選という流れの中で、人材紹介会社も厳しい評価にさらされる。淘汰の流れも加速していく。人材ビジネス再編の時代を迎えて企業に選ばれる人材会社になるために、コンサルタントの能力を高めることでサービスの質を充実させ、コンプライアンス体制を確立することが一層求められる一年になりそうだ。



ブックマークに追加する