カレラ インタビュー

セプテーニ・ホールディングス 七村守 代表取締役会長兼CEO

2006-11-01 17:41   ()

ベンチャー企業には情熱が必要だ!

株式会社セプテーニ・ホールディングス 七村 守 代表取締役会長兼CEO

人材採用の現場では、求職者がエントリーする最初の窓口としてウェブサイトは欠かせない存在になっている。企業人事のアウトソーシング関連事業で2001年ジャスダックに上場し、現在、最先端のウェブマーケティングを主要事業とするセプテーニ。
ウェブマーケティングの現状とベンチャー企業に求められる人材像を、七村守セプテーニ・ホールディングス会長兼CEOに聞いた。

――主力になったインターネット事業はどのように展開しているのですか。

 ネット広告をすごくシンプルにいいますと、初めはバナー広告が出てきて、次にメール広告が出ました。次にウェブ広告、次にリスティング広告、現在はアフィリエイト広告が出ています。そしていま、大きく育ち始めているものには、モバイル広告、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)広告、動画があります。この3つはこれからの広告手法です。時代の変化とともに新しい広告手法、広告メディアがどんどん生まれてきています。話題になっているWeb2.0がいわれ始めたのは、リスティング広告が出始めた頃からです。このあたりがWeb2.0系と言われています。
 一言でいうとウェブ2.0以前は、いわゆるテレビ、雑誌広告等と同様のプッシュ型広告でした。リスティング以後はプル型の広告になっています。自らがアプローチして情報を採りに行くことで広告価値を生み出している。ここが180度変わりました。
 バナー広告からメール広告に移る時期それが99年で、当社ではその時期にネット広告を始めています。
 リスティング広告とは、日本語では検索型広告といいます。グーグルやヤフーで検索し、その検索に連動して広告画面が表示されるという手法です。ヤフーにはオーバーチュアという会社が入って、広告画面の表示に連動する仕組みになっています。例えば、キーワードを入力して検索すると、コマーシャルになるスポンサーサイトが画面の上位に表示されます。
 リスティング広告の特徴は、自分から情報価値のあるものを求めて行って、何らかのアクションを起こす。通常の広告は受身ですが、リスティングは検索で自分の欲しい情報を取りに行くと、関連した広告が表示されます。そういう意味では情報と広告の違いは限りなく無くなることになります。検索条件を絞り込めば、絞り込むほど自分の欲しいものに近づくわけです。
 SNSは、コミュニティーの中で自分の知り合いが買ったら「すごくよかった」というような口コミ効果が期待されています。広告では、よく見えても「本当かな?」と疑いますが、SNSで評判なら「間違いない、買おう」と思うわけです。つまり感覚を共有化してしまうことになるのです。そういう意味では完全なプル型になってきます。

――人材採用でもウェブの活用に対する関心が高まっています。

 採用においても、ネットは欠かせない存在になっていると言っていいでしょう。人材ビジネスで、いま最も使われている広告手法はリスティング広告です。転職者は、パソコンで「転職」「職種」「就業場所」などをキーワードに検索してくるわけです。転職層の年齢に因りますが、20〜30代が転職者のボリュームゾーンだとすると、その人たちは明らかにまずパソコンで検索するようになっています。ブランド力があれば、直接、人材サービス提供会社のサイトに来ることもありますが、例えば候補者が特殊なエンジニアである場合、自分の技術にマッチする斡旋情報をもっている紹介会社はどこかを、検索で絞込み、自分にとって必要な情報を提供してくれる会社を探します。
 いますぐに転職したいというのではなく、少し転職を考えているというときに、直接紹介会社へ行くことはまずありません。どの紹介会社がいいか、派遣会社がいいか、最初のアクセスはまず検索してからが多い。一般ユーザーがアプローチするきっかけは、リスティング広告が一番手っ取り早い手法になっています。

――会社設立の経緯を教えて下さい。

 1990年にリクルートをスピンアウトして7人で会社を立ち上げました。もともと独立心が強かったことと、当時はバブル経済がピークで企業はなかなかいい採用ができない状況でした。また当時リクルートは負債を抱えており、クライアント・オリエンテッドという価値観が入る余地はありませんでした。そうした状況の中、リクルートの採用支援も限界点にきていると感じ、だったら自分たちで成果を出したいと考えました。
 独立して一番初めに手掛けたのは採用コンサルタントの業務です。そして、今後上場を予定している企業を手伝うことにしました。当時も今も同じですが、大学を卒業して就職活動で選んで入った会社にもかかわらず、3年間で3割くらいの学生が辞めてしまいます。「自分に合う会社、自分で作り上げていく会社に参画して、仕事をした方が自己実現できる」という思いがありました。
 バブル経済がはじけて、企業が採用数を減らし、予算も減ると、採用コンサルティングだけでは食べられない状況になりました。同時に人事部員も減り、自分たちの業務量は変わらないという状況になっていました。企業の人事部はマンパワー不足に陥っていました。この時、人事業務をアウトソースしてくれないかという要望が結構でてきました。それ以後、アウトソーシング事業として、企業の人事部が企画するセミナーなどを代行して企画・運営するビジネスに移りました。
 その中の仕事の1つとして、パンフレットの発送やデータベース管理などの業務を得意としていました。これは採用に限らず販促DM(ダイレクトメール)とかプロモーションの手伝いもできるということで、DMの企画制作、データベース管理から発送までの業務を手掛けるようになりました。これが90年から2000年までの事業のコアになったアウトソーシング事業です。その間、平行して人材紹介事業やアウトプレースメント事業もやりましたが、軌道に乗らず撤退しています。

――成長の過程で苦労されたのはどの時期ですか。

 新卒を採用して一から鍛える方が、その後の成長速度が速いと思っていましたので、会社設立後3年目から新卒採用を始めました。人の数の伸びとビジネスの伸びは、ある程度リンクしているところがあります。人がいることで新しいアイデアや知恵も出てきます。ですから最低限の人員は増やしていこうと思っていました。慢性的に人が足りないという状況でしたが、20人を超えたら、また何人か辞めて17〜18人になってという社員が定着しない状況が何年か続きました。それまで、人を採ることを目的にしたことはなかったのですが、会社ができて8年目、最後はさすがに全員は辞めないだろうということで、新卒を15人一度に採用しました。その結果、従業員が30人を超え、今はグループで400人の規模になっています。

――主力のインターネット広告事業はいつから始めたのですか。

 99年に現在のインターネット広告事業のベースになる事業を始めました。現在、その事業の社長に就任している佐藤(光紀社長)が2年間、アウトソーシング事業に取り組み、業績を上げていましたが、ある時「今の事業は分かったので違うことをしたい」と言ってきました。似たようなケースはそれまでもあったのですが、それまでは経営的に余裕はありませんでした。彼がそう言ってきた99年ごろは、比較的余裕が出てきていましたので、「1人くらい自由なことをさせても会社は潰れないだろう、だったらやろう」ということになりました。
 当社の社是は「ひねらんかい」といいます。これは工夫するとか、知恵を出すということです。それをとって、新事業を企画展開する「ひねらん課」というセクションを社内に作りました。この課の目的は簡単で、?6カ月間で事業モデルを考えなさい、?そこから半年間で短月黒字にしなさい、?さらに半年間で累損を一掃しなさい、?事業モデルは会社のコアコンピタンスを使えるものであれば、それ以外はどんなことでもいい――というものです。
 もともとBtoBのビジネスをやっている会社として基盤ができていましたので、同じ事業ドメインで取り組めるものならば、どんな事業でもいいと考えました。それで、彼がいろいろと調べた結果、ネット広告がこれから伸びるということが分かり、参入することにしました。当時は上場直前で、社員が50人前後でしたが、これがうまくいって、今期の決算で200億円強の売上のうち、ネット関連は約85%を占めるまでに成長しています。01年にジャスダックに上場したときはアウトソーシング事業が中心で、ネット広告はそのうちの一部にすぎず、シェアは19%程度でした。

――今後の事業戦略を教えて下さい。

 中期計画を04年度10月から始めています。当社の場合は中期計画を7カ年で策定しています。セプテーニという社名の由来は、ラテン語の7という意味を持っていて、11年の9月が7カ年の終了時です。終了時を変えないで、見直しを毎年進めています。その時に掲げた目標は「強く偉大な会社」にしようということで、スピード、ストレッチ、パートナーシップ、フェア&オープン、オリジナリティー、パッション、フリー&ルールという7つの基本方針を示しています。
 創業から7年目で売上が10億円を超え、次の7年の04年の9月に100億を超えました。このように当社にとって「7」という数字は特別な意味があります。そして、これからの7年で1000億円を超えるように中期計画を立てています。100億円までは自分たちの地力で強い会社にすることができましたが、これからの1000億円までの道のりは社会的な評価も受けなくてはいけない。そういう意味では単に売上を伸ばすだけではなく、そのことによってもたらされる社会的な影響力を考え、「強く偉大な会社」にしようと考えています。
 もう1つは数値目標で、「1、10、100、1000」の法則というものをつくっています。これは「1人当たり売上が1億円」「営業利益率が10%」「商人(あきんど=経営者)を100人作る」「売上を1000億円にする」という分かりやすいものです。まだ若い会社ですから人に教育を施し、投資することで未来の価値を生むと考えています。例えば100人の商人をつくるために、育成のためのビジネスリーダーシッププログラム(略称=BLP)を開設しました。優秀で潜在力がある人を年間3〜5人選び、グロービスのマネジメントスクールの受講、ジョブローテーション、論文提出など、一年くらいのプログラムを履修させます。これを卒業したら、商人になる機会を与えることになります。商人になるということは、新規事業を立ち上げ、子会社、関連会社の社長になることです。すでに28歳の男性や29歳の女性が関連会社の社長に就いています。

――人材に対する考え方とベンチャーに必要な人材像を教えて下さい。

 究極の人材像は、自律できる人材だと思っています。それは自ら課題を発見し、その課題を解決する能力を有し、実行できることです。推されてやるというよりも、自ら進んでやるということですね。でも世の中、そういう人ばかりではありません。
 採用には、過去セプテーニで成功している人の性格類型や考え方を抽出したコンピテンシーモデルを使っています。今の学生は賢くなればなるほど、「なぜ私はこの会社で採用されるのか」ということについて、説明を求めています。単に優秀だから採るという発想ではだめで、「こういうところが最もわれわれの会社で能力を発揮できると思うから採用する」という理由が必要なのです。
 とはいえ、入社してカルチャーに合うかどうかは結構大事なことです。そしてビジネスマンとして、業績成果を上げるということが大事です。この点では私は京セラ名誉会長の稲盛さんに共鳴しています。氏が言う業績成果に関する公式があります。「成果」=「考え方」×「能力」×「情熱」――というものです。確かにそうだなと思うことは、能力が高くて10であっても、情熱が1であれば、成果は10しかでない。能力は5と低くても、情熱が5あれば、成果は25で、2.5倍になるということです。この情熱(パッション)を持っている人でないと、ベンチャーは持続しないと思っています。大学卒業時の能力には差がありますが、パッションを大きくもつことがその後の成長に大きな差を生み出すと思っています。仕事をやるときも情熱を持ってやれる人、過去どんなことに情熱を持ってやってきたかということが判断基準として大きいと思います。成長の速度は情熱とリンクしています。本当にやりたいと熱望する人は寸暇を惜しんで吸収していきます。そういう人は能力が高くなっていく。面白くないと思っている人はなかなか伸びない。好きなことだったら打ち込んでやるので、それが辛いとは思いません。それがパッションだと思います。
 ベンチャーに求められるものは、ハングリーにチャレンジする精神です。動機は金であっても、女性であっても、社会貢献であっても何でもいいのです。その動機が強ければ強いほど、たぶん成功すると思います。大企業にそんなエネルギーは必要かといえば、なくてもいいものです。人間は守りに入ろうとすると、すべてが程々になってきます。ベンチャーには、大きなエネルギーを感じる人が最も必要なのです。

プロフィル
七村 守氏
1955年 大阪生まれ 山口大学卒業後、
1979年 株式会社リクルート入社
1989年 同社北関東支社長
1990年 当社入社
(設立、当時の社名は株式会社サブ・アンド・リミナル)
1991年 当社代表取締役社長
(2000年3月 株式会社セプテーニに社名変更)
2004年 当社代表取締役会長兼CEO(現在に至る)
(2006年10月 株式会社セプテーニ・ホールディングスに社名変更)

 

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